曲線を活用して
地形と調和した建築物
2007年、ソウル特別市は東大門地域の立ち遅れが目立つ都心部を開発し、伝統と現代を繋いで未来の価値をプラスするために「東大門デザインプラザ&パーク(DDP)」国際指名招請コンペを開催しました。コンペには国内外の有名建築家8人が招待され、その結果、女性初のプリツカー賞*受賞者で建築と都市、デザインの境界の融合を絶え間なく試みる革新的なイギリスの建築家ザハ・ハディッド(1950~2016)の作品が当選しました。
建築家は、東大門デザインプラザの設計にあたり2つのコンセプトを設けました。1つ目は「換喩の風景」で、「換喩」とはある事物を表すのにそれと深い関係のある事物で置き換える比喩法のひとつで、早朝から深夜まで絶え間なく変化し続ける東大門地域の躍動感を建築で表現しようとしました。
2つ目は「都心のオアシス」で、韓国の伝統水墨画で描写される自然の風景を東大門デザインプラザに表現し、密集したビル群とコントラストを成す都心のオアシスを作ろうとしました。
東大門デザインプラザは、この2つのコンセプトによって躍動感がありながらも自然な景観を作り出す都心の憩いの場として完成しました。完工当時は、建物の型破りなデザインが歴史都市ソウルに相応しくないという批判がありましたが、今ではニューヨーク・タイムズが選んだ世界的な名所となり、ソウルの魅力的なランドマークになっています。東大門デザインプラザは世界最大規模の3次元非定型建物で、建物を覆う計4万5千枚にも及ぶアルミパネルは、建物の形に合わせてそれぞれ違う形状で製作されました。非定型の曲面が外部から内部へ、内部から外部へと続いているため、訪問客の動線も水の流れのように自然に内部と外部を行き来でき、どこにいてもダイナミックな空間が感じられます。
* プリツカー賞:毎年、建築芸術を通じて才能とビジョン、責任ある姿勢が見られ、人類や環境に一貫した意義深い貢献をしてきた存命の建築家を対象とする賞で、「建築界のノーベル賞」と呼ばれています。